肥満症でお困りの患者さんへ
肥満症は「努力不足」や「甘え」による病気ではありません。簡単に、安く高カロリーの食品が手に入ったり、活動量が低下しやすい現代の社会環境の影響ももちろんあります。しかし、一番問題となるのは「ストレス」による食べ過ぎです。 人は得意なこと、不得意なことが一人ひとり違うため、どういう状況や環境でストレスを感じるかについても人それぞれ違います。そこで、まずはストレスの原因をはっきりさせることが大切です。 次に、ストレス源を減らすこと、ストレス発散の方法をつくることを考えます。とはいえ、そう簡単にいかないことも多く、ストレスと付き合いながら食生活をコントロールしていくことが必要になってきます。 これは自分一人の努力だけでは非常に困難です。継続的に通院して、医師・看護師・管理栄養士のサポートを受けていくことが近道です。必要な場合には、減量をたすける薬物療法なども検討していきます。お困りの方は是非一度、当院を受診していただければと思います。
「肥満症」とはどのような病気?
「肥満」とは、BMI (Body mass index; 体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)) 25 kg/㎡以上の体格である、という「状態」をあらわす言葉です。一方で「肥満症」とは、肥満に加えて何らかの健康障害を伴った「病気」をあらわす言葉です。
肥満はさまざまな病気を引き起こします。代表的なのものとして「糖尿病」「脂質異常症」「高血圧」などがよく知られています。とくに内臓脂肪が多いタイプの方(腹囲の大きい方)はこれらの病気を合併しやすく、そして「狭心症・心筋梗塞」や「脳梗塞」につながりやすいことがわかっています(メタボリックシンドロームと呼ばれています)。
ほかにも、「脂肪肝」「睡眠時無呼吸症候群」「変形性膝関節症」「月経異常・不妊」「腎臓病」、さらには「心不全」や一部の「がん」も肥満にともなって起こりやすくなることがわかっています。
「肥満症」は自己管理の甘さからくる病気ではありません
人間はストレスを感じると防衛本能として満腹感を求めます。食べ過ぎてしまう裏側には、患者さんごとに抱えているさまざまな事情があります。人付き合い上でのストレス、忙しすぎるスケジュール、睡眠不足、気分の落ち込みなど、いろいろなことがあると思います。 人はそれぞれ得意なこと不得意なことが違うため、ストレスを感じる対象も違います。これらのことを自分一人の力で対処してコントロールすることはとても難しいことです。肥満症は、自身の頑張りだけで解決することは難しくサポートがとても重要な病気です。当院では患者さんのお話をよくうかがって、個々のライフスタイルにあわせたサポートをしてまいります。 また、特殊な内分泌の病気(甲状腺機能低下症、クッシング症候群など)や、ほかの病気に対して処方されているお薬が肥満症の原因となっている場合もあります。当院ではこれらの点についても注意を払って診療をおこなっています。
肥満症の治療
食事療法・運動療法
肥満症治療のなかで食事療法は最も重要ですが、最も難しいものでもあります。全体のカロリーを減らして、たんぱく質やビタミン・ミネラルは十分にとる、ということが基本になります。 ただし、それが実践できればもちろん理想的ですが、実際はそう簡単にはいきません。「外食以外の選択肢がない」「食事の時間がほとんどとれない」「空腹感が強すぎてつらい」「夜勤などで生活が不規則」など、さまざまな壁が立ちはだかります。 当院では、管理栄養士・看護師・医師が現在の食事内容をライフスタイルと合わせてよくうかがって、実践可能でかつ効果的なポイントを一緒に模索しサポートしていきます。糖尿病のある患者さんでは、食事療法をサポートしてくれるような効果をもつ薬剤が使用可能であり、個々の患者さんの状況に合わせて調整していきます。 運動には、有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、水泳など)、レジスタンス運動(筋力トレーニングなど)などいくつかの種類があります。運動療法も食事療法と同じように、どのタイプの運動が適切かということは患者さんごとに違ってきます。やはり個々のライフスタイルをよくうかがって、取り入れやすく適切な運動について提案していきます。
薬物療法
日本では、食欲をおさえるタイプの薬が抗肥満薬として認可されています。この薬は主に食欲をおさえるはたらきがあるため、空腹感が強すぎて食べすぎてしまうタイプの方に有効な可能性があります。 BMI 35 kg/㎡以上の方に対して保険適応となりますが、薬の特性から病状によっては使用できない場合があります。ほかにも、最近登場した糖尿病薬の一部には食事療法をサポートしてくれるような効果をもつものがあり、糖尿病のある患者さんでは減量に有用な場合があります。 当院では、患者さんの病状をよくみて、またお薬に対する患者さんご自身のお考えもよくお聞きして、納得できる薬物療法をおこなってまいります。
手術療法
高度な肥満症のため困っている患者さんには、胃をバナナ状に細く切除する手術である、「腹腔鏡下スリーブ状胃切除術」が保険適応となっています。具体的にはBMI 35 kg/㎡以上で、さらに糖尿病などの合併症がある方が対象になります。 手術療法の効果は非常に高く、大幅な体重減少と健康障害の改善が期待できます。BMI 35 kg/㎡以上の肥満症患者さんに対しては、手術療法は最終手段ではなく、早い段階で検討するべき標準治療となってきています。 一方で、この手術を受けるにあたっては特有の注意点がたくさんあるため、手術療法を熟知した代謝内科医師によるサポートが非常に重要になります。詳細をお知りになりたい方は、ぜひ当院へ受診していただければと思います。当院では、手術に適した方を実施が可能な医療機関へ紹介いたします。