甲状腺

甲状腺の病気でお困りの患者さんへ

甲状腺の病気でお困りの患者さんへ

甲状腺の病気は、疑って検査をしないとわかりません。一方で、甲状腺の病気だけに特有の症状というものがあまりないため、疑うこと自体も難しい病気です。短期間で改善しないような体調変化がある場合、一度は甲状腺の検査をしてみることがよいと思います。 甲状腺の病気は、遺伝体質と性別が大きく関係するため、甲状腺疾患の血縁者がいる女性の方は、とくに頭においていただければと思います。心配される方は、ぜひ当院へご相談ください。

甲状腺とはどんな臓器?

甲状腺とはどんな臓器?

甲状腺は、「のどぼとけ」のやや下側にある蝶々が羽を広げたような形をした小さな臓器です。甲状腺では脳の指令のもとで「甲状腺ホルモン」がつくられていて、このうち一部は血液中に分泌され、残りは甲状腺の中に貯蔵されています。 甲状腺ホルモンは全身の臓器の代謝を調節しているため、甲状腺ホルモンのバランスが崩れるとさまざまな臓器の調子が悪くなってしまいます。甲状腺の病気には特有の症状がないため、疑って検査をしてみないとわかりません。以下のような症状があって甲状腺の病気を心配されている方は、一度検査を受けていただくことをおすすめいたします。甲状腺の病気は遺伝体質が影響しやすい特徴がありますので、血縁者に甲状腺の病気がある方では注意が必要です。 また、甲状腺は「しこり」ができやすい臓器です。甲状腺にできる「しこり」の大部分は良性のものですが、稀に悪性腫瘍(がん)ができることもあります。甲状腺の「しこり」が疑われた場合、まずは超音波検査を受けていただくことをおすすめいたします。

甲状腺の病気ではどんな症状が出る?

甲状腺に病気があるかもしれないときの、よくある症状をご紹介します。

甲状腺ホルモンの過剰(機能亢進症、中毒症)でよくみられる症状

  • 動悸(心臓がどきどきする)、息切れ
  • 暑がり、汗をかきやすい、手が震える
  • 食欲があるのに体重が減る
  • イライラ感、集中力低下、不眠
  • 首・喉元あたりが腫れている
  • 目が飛び出しているように見える、ものが二重に見える、まぶたが閉じにくい(バセドウ病のみ)

甲状腺ホルモンの不足(機能低下症)でよくみられる症状

  • むくみ、疲れやすい、気力がない
  • 寒がり、食欲低下、便秘
  • 抜け毛、皮膚の乾燥
  • コレステロール上昇
  • 体重増加
  • 月経不順

甲状腺腫瘤(しこり)でよくある症状

  • 首・喉元あたりに「しこり」を触れる
  • 首・喉元のあたりの圧迫感、違和感
  • 声がかすれる、食べ物が飲み込みにくい
  • レントゲンで気管が偏っていると指摘された

甲状腺の病気にはどんなものがある?

甲状腺ホルモンの過剰を起こす病気

甲状腺ホルモンの過剰を治療せずに放置すると不整脈や心不全を引き起こしてしまいます。甲状腺ホルモンが過剰となる病気はいくつかあり、最も頻度が高い病気は「バセドウ病」です。病気によって治療法が異なりますので、専門的な検査をおこなってまず診断を確定させたうえで治療を始めることが重要になります。

甲状腺ホルモンの不足を起こす病気

  • 橋本病
  • 甲状腺に対する放射性ヨード治療、手術摘出を受けた方
  • その他

甲状腺ホルモンが不足する病気は、ほとんどが「橋本病」です。甲状腺ホルモンの不足が長期にわたって続くと、血液中のコレステロールの上昇などが影響して動脈硬化による病気(狭心症・心筋梗塞など)を起こしやすくなります。甲状腺ホルモンの不足は症状としてあらわれにくく、気付きにくい病気です。血縁者に甲状腺の病気がある方、症状があって心配される方は当院で一度検査を受けていただくことをおすすめいたします。

甲状腺の検査

血液検査

血液検査によって、甲状腺ホルモンの状態(過剰・不足の有無)がわかります。

「FT3」「FT4」

血液中にある甲状腺ホルモンそのものです。この値が正常範囲を超えて高ければ「ホルモン過剰」、低ければ「ホルモン不足」と判断できます。一方で、「FT3」、「FT4」が正常範囲内であるにも関わらず実際はホルモン過剰・不足である場合もあります。これは「TSH」という検査によって判断します。

「TSH」

「甲状腺刺激ホルモン」という名称で、甲状腺の司令塔にあたる脳下垂体から分泌されるホルモンです。「FT3」、「FT4」よりも甲状腺のはたらき具合をよく反映する検査です。

 

・当院では検査結果が当日にわかります

甲状腺機能の状態は、この「FT3」、「FT4」、「TSH」3つの値とバランスによって判断します。当院では、これらの検査を院内で実施できる設備を備えております。採血後30分ほどで測定できますので、当日の結果を見て治療方針に反映させることが可能です。採血のために前もって来院していただくなどのお手間は不要です。

甲状腺エコー(超音波)検査

甲状腺にできる「しこり」のうち大部分は良性のものですが、時に悪性腫瘍(がん)である場合もあります。「しこり」が良性なのか、または悪性腫瘍の可能性があるのかについての判断には、超音波検査が有用です。超音波でしこりを細部まで観察し、サイズ・形、悪性腫瘍にみられる特徴などがないかを調べます。超音波検査の結果、悪性腫瘍の疑いがある場合は「穿刺吸引細胞診」という検査が必要になります。その場合は、検査が可能な医療機関をご紹介いたします。 「しこり」以外の甲状腺の病気においても、バセドウ病、橋本病、亜急性甲状腺炎などでは特徴的な所見がみられることがあり、超音波検査が診断の補助として役に立ちます。当院では甲状腺エコー機器を備えており検査が可能です。

甲状腺の病気に対する治療法は?

バセドウ病

バセドウ病

バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰につくられてしまう病気です。免疫システムの異常によって起こることがわかっていますが、厳密には解明されていません。主に甲状腺ホルモン過剰による症状を生じるほか、バセドウ病では眼に症状が出る(眼が突き出る、ものが二重に見える、まぶたが閉じにくい、など)ことがあります。診断は、甲状腺機能検査(TSH、FT3、FT4)および「甲状腺レセプター抗体」とよばれる血液検査、超音波検査によっておこないます。

バセドウ病の治療

バセドウ病の治療法にはそれぞれメリット、デメリットがあり、患者さんごとの病状やライフスタイルに合わせて決める必要があります。当院では患者さんのお考えをよくうかがい、相談の上で適切な治療法を提案いたします。

薬物療法(抗甲状腺薬、無機ヨード)

主に抗甲状腺薬の内服により、甲状腺ホルモンを抑えます。ホルモン過剰の程度が強い場合や、抗甲状腺薬が副用により使用できない場合は、無機ヨードの内服を併用することがあります。

抗甲状腺薬は、稀に白血球が減少する副作用「無顆粒球症」を生じることがあります。白血球が減少すると、細菌やウイルスによる感染症にかかりやすく、また重症化する危険があります。この副作用は、とくに内服をはじめて早期に起きることが多いため、開始後3カ月程度は、原則2~4週間ごとの副作用チェックが必要になります。

放射性ヨウ素内用療法(アイソトープ治療)

薬物療法によるコントロールが難しい場合や、早期に根治的治療を希望される方に対しておこなう治療法です。甲状腺にはヨウ素を取り込む性質があるため、それを利用して放射線を出すヨウ素のカプセルを服用して体の内側から甲状腺を破壊する治療法です。

治療後1~2カ月程度で甲状腺機能は正常に向かいますが、その後は機能低下となることも多く、その場合は生涯にわたって甲状腺ホルモン剤を内服する必要があります。しかし、甲状腺機能は安定するためバセドウ病の不安定な病勢に悩まされることはなくなります。

一方で、甲状腺のサイズが大きい場合は治療効果が十分に得られないことがあり、複数回おこなう場合もありえます。バセドウ病眼症が不安定な状態の方、妊娠・授乳中の方では実施できません。

手術療法

薬物療法によるコントロールが難しい場合、甲状腺のサイズが大きい場合、バセドウ病眼症のためアイソトープ治療が難しい場合、短期間で根治的治療を希望される方に対しておこなう治療法です。原則として甲状腺を全摘するため、術後は甲状腺ホルモン剤を生涯にわたり内服する必要があります。しかし、甲状腺機能は安定し、バセドウ病の不安定な病勢に悩まされることはなくなります。

橋本病

橋本病

別名、「慢性甲状腺炎」とよばれる病気で、バセドウ病と同様に免疫システムの異常によって起こることがわかっていますが、やはり厳密な原因は解明されていません。甲状腺に慢性の炎症が起こり、甲状腺が腫れて大きくなったり、反対に小さくなることもあります。 一部の方では甲状腺ホルモンの分泌が低下してホルモン不足による症状を引き起こすため、その場合は甲状腺ホルモン剤の内服が必要になります。 一方で、橋本病は成人女性の7~8人に1人にみられる非常に頻度の高い病気であり、多くの方では甲状腺機能は正常に保たれています。甲状腺機能が正常であれば治療は必要ありません。ただし、将来的に甲状腺機能が低下してくる可能性があるため、血液検査による定期的なチェックが必要です。

甲状腺腫瘍

超音波検査をおこなって、良性と考えられる場合(サイズが小さく悪性を疑う特徴がない場合、穿刺吸引細胞診により良性と診断された場合)は、定期的な超音波検査をおこなって様子をみていきます。
経過中にサイズが増大したり、新たに悪性を疑う特徴がみられた場合は、「穿刺吸引細胞診」をおこない、その結果やほかの状況を総合的に判断して手術を検討することもあります。
穿刺吸引細胞診により悪性(甲状腺がん)と診断された場合は手術療法が必要になります。また、穿刺吸引細胞診では良性か悪性か判断が難しいタイプの甲状腺がんも存在するため、その場合も手術療法を検討する必要があります。
甲状腺がんにはいくつかのタイプがありますが、多くのものはほかの臓器のがんと比較して進行が遅く、生命がおびやかされることは少ないです。

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